親鸞会批判の真実

本願寺の現状

死後の浄土が認められぬ東本願寺

　東本願寺（真宗大谷派）の研究機関である親鸞仏教センター所長の本多弘之氏が講演の中で次のように語った。

如来の回向に値遇(ちぐう)するということは、往相の回向と還相の回向に値遇する。往相の回向の利益として大涅槃にまで至る。それでおしまいかというと、おしまいではない。大涅槃を得れば普賢の徳を修すると。そのようなことは凡夫にできるはずがないから、死んでから浄土に往ったら還って来られると。以前はそう解釈したわけです。しかし、親鸞聖人は、そのように書いてはいないのです。
（親鸞仏教センター ホームページより）

　専門用語が使われ、難しい内容だが、ここでキーワードとなっている往相廻向と還相廻向について、少し解説しておこう。
親鸞聖人は主著『教行信証』冒頭に、次のように書いておられる。

「謹んで浄土真宗を按ずるに、二種の廻向有り。
一には往相、二には還相なり」
（『教行信証』教巻）

　これは阿弥陀仏が私たちに与えてくださるものが二つある、といわれている親鸞聖人のお言葉である。阿弥陀仏のお力を「他力」というから、これを他力廻向ともいわれる。

　では阿弥陀仏が与えてくださる二つのものとは何か。一つは「往相」。これは、「往生浄土の相状」のことで、いつ死んでも娑婆（私たちが生きている世界）から浄土へ往ける、往生一定の身にする働きをいう。この世で阿弥陀仏の本願に救われ、往生一定の身になった人は、死ねば必ず弥陀の浄土に往けるので、一日生きれば一日、一年たてば一年、極楽へ極楽へと近づいていることになる。この「極楽浄土へ往く相」を「往相」というのである。

　二つ目の「還相（げんそう）」とは、「還来穢国（げんらいえこく）の相状」のことで、死んで浄土に往生してから、苦しみ悩み続ける衆生を救うために、この娑婆（穢国）に還って来る（還来）働きをいう。

　このように「往相」とは平生のことであり、「還相」とは死後のことであるが、本多氏は、「死んで浄土に往生するなどと親鸞聖人はおっしゃっていない」と真っ向から否定する。死後の浄土を認めないのは東本願寺の特徴だが、それは親鸞聖人の教えではない。

　高森顕徹先生はＱ＆Ａで、死後の浄土を認めないのは明らかに間違っていることを次のように教えてくださっている。

【問】
「親鸞聖人は、死後の浄土は認めていられなかった方である。信心を獲た時に娑婆世界が極楽浄土と知らされるのだから、この世で正定聚になり、死後、浄土で仏になるという、現当二益の教えは間違いである。娑婆即寂光土の一益が、親鸞聖人の真の教えである」
と言う学者がありますが、どちらが正しい親鸞聖人の教えでしょうか。

【答】
確かに親鸞聖人の教えを、そのように理解し宣伝する学者が、近年特に増加しているように思われます。しかし、それは明らかに間違いです。
それが親鸞聖人の教えであるか、否かは、あくまでも、聖人のお言葉によって判定されなければなりません。そのほか、何人の想像も推測も許されません。
親鸞聖人は、こうおっしゃっています。

悲しきかな、愚禿鸞、愛欲の広海に沈没し、名利の大山に迷惑して、定聚の数に入ることを喜ばず、真証の証に近づくことを快しまず。恥ずべし、傷むべし
（『教行信証』信巻）

情けない親鸞だなぁ。愛欲の広海に沈み、名誉欲と利益欲に振り回されて、仏になれる身（定聚）になったことを喜ばず、日々、浄土（真証の証）へ近づいていることも、ちょっとも楽しまない。
なんと恥ずかしいことか、情けないことよ。

　この世で弥陀の救い（定聚）に値ったことを「定聚の数に入る（入った）」と言い、死後の浄土（真証の証）には「近づく」と言われて、弥陀の救いに現・当二益あることを慎重に言葉を使い分けて、明らかにされています。
　このように、今生と死後の、二度の弥陀の救いのあることを説かれた、聖人のお言葉はたくさんありますが、それを蓮如上人は問答形式で分かりやすく教えられています。

問うていわく、「正定と滅度とは、一益と心得べきか、また二益と心得べきや」
答えていわく、「一念発起のかたは正定聚なり、これは穢土の益なり。つぎに滅度は浄土にて得べき益にてあるなりと心得べきなり。されば二益なりと思うべきものなり」
（御文章）

「弥陀の救いは一度でしょうか、二度でしょうか」の問いを出し、「この世は、弥勒菩薩と同格（正定聚）に救われ、無上の仏覚（滅度）は、死後、浄土で得られることである。だから弥陀の救いは、二度（二益）あることを知るべきである」と答えられています。
このほか、娑婆世界と死後の浄土を明確に区別されている、親鸞聖人のお言葉は多くありますが、いまは、『末灯鈔』の文を挙げれば十分と思います。

この身は今は歳きわまりて候えば、定めて先立ちて往生し候わんずれば、浄土にて必ず必ず待ちまいらせ候べし
（十二通）
親鸞は、今生の終わりに近づいた。先に浄土へ往って待っているから、間違いなく必ず来なさいよ。

信心の定まると申すは摂取にあずかる時にて候なり。その後は正定聚の位にて、まことに浄土へ生まるるまでは候べし
（十三通）
〝信心が定まる〟とは、摂取不捨の絶対の幸福になったときである。それから浄土で仏になるまでは、必ず、弥陀の浄土へ往ける正定聚の身になるのである。

（『親鸞聖人の花びら』藤の巻より）

　親鸞聖人も蓮如上人も、この娑婆世界と死後の浄土とをハッキリと区別して教えてくださっているにもかかわらず、東本願寺は、なぜ死後の浄土を認めないのか、浄土真宗の「浄土」を捨てて、自ら「真宗大谷派」と名乗り、浄土は死後のことではないと言い張るのだろうか。

　それは、自分たちが弥陀の救いを信じられず、浄土往生一定の大満足もないからにちがいない。だから、初めから「死んで浄土に往くなんておとぎ話だ」「そんなことあるはずがない」と疑って、弥陀も浄土も観念的なものにしてしまっているのだ。
　東本願寺（真宗大谷派）で、近代教学を提唱した者たちの言葉に、その原因ともいえる体質が如実に現れている。

「親鸞聖人のみ法というものは、今日我々が完成しなければならぬと思う。これは我々の責任であるといっても差支えないと思います」
（「往生と成仏」曽我量深の言葉より）
「今までの御聖教だけでは或はあいまいな事が沢山ありまして、今日やはり教学というものを決定しなければならぬと思います」
（同）
　自分が理解できぬことを「あいまい」と言ってはばからず、聖人の教えを「未完」と貶め、自分たちが完成させると嘯いている。そんな者たちを信奉しているから、東本願寺の月刊誌にも、
「親鸞聖人を宗祖とするということは、決して聖人の言葉を金科玉条とするということではありません」
（『ともしび』平成23年４月号）
などと、堂々と書かれている有り様である。
　親鸞聖人のみ教えにしたがい、進ませていただく親鸞学徒は、どうあるべきなのか、蓮如上人は明快に教えてくださっている。

蓮如上人へある人申され候、開山の御時のこと申され候、「これはいかようの子細にて候」と申されければ、仰せられ候、「我も知らぬことなり、何事も何事も知らぬことをも開山のめされ候ように御沙汰候」と仰せられ候。
（御一代記聞書）

ある人が蓮如上人に、
「親鸞聖人は、なぜそのようなことをなされたのでしょうか」と尋ねた時、「この蓮如も分からぬ、しかし、何事も何事も親鸞聖人のなされたようにするのがよい」と仰った。

「私は、そう思わない」
「私には、合わない」
「死後の浄土など信じられない」
などと、自身の思いが正しいことを大前提にお聖教のご文を解釈する人は、善知識方よりも優れた人か、よほどのトンチンカンである。蓮如上人のお言葉に、深く懺悔しなければならないであろう。

>> 記事のはじめに戻る

関連記事

「家族の会」のメンバーである瓜生崇氏（本願寺僧侶）に会った体験記

実際に「家族の会」のメンバーに会った体験記１

「家族の会」の会合資料

• >>本願寺の現状・バックナンバー